まちにすむ人々12―公園の夜2

 夜の公園で出会うのは、洗濯オバサンだけではない。ほぼ、ボクと同じ時刻に登場する(食事や風呂に入る時間サイクルが同じ?)男性がいる。

 その男性は、いつも真っ黒なシルエットで登場する。というのは、薄暗い街路灯の下ということと、光が男性の奥から仄かに射しているので、夜にもか変わらず逆光となり、シルエットのようにしか見えないのだ。

 とはいえ、男であること。同時にそれなりの年配者であることは、さっすることができる。

 男性は、団地の方から一人で登場し、まっつぐベンチ横の灰皿へ。この間、ムダな動きは全くない。灰皿の脇に立ち、手際よく鋳物製の蓋を取り、中からシケモクを探り、選んで、またまた手際よく蓋を戻す。この間、男性の視線はずっと灰皿に集中する。辺りをキョロキョロすることはない。

 この男性、ボクの横の灰皿をあさることは決してない。と同時に、他のベンチ横の灰皿をあさることも決してない。常に、ボクと一つおいたベンチ横の灰皿のみである。

 うん~。オジサンも銘柄に拘るのかな?

 ボクが夜の公園に登場するちょいと前にも、ベンチに座っている間もいつも決まった灰皿だ。

 まあ、そういうボクも座るベンチはいつも同じ。単なる人間の習性なのか。

 「お爺ちゃん、また、そんなシケモク拾ってきたの!」そんな声が団地の中から、聞こえてきそうだが、いまだそうした声は聞こえてきたことがない。夜の公園は、静かだ。

(I.K.)