まちにすむ人々11―公園の夜1

 ボクは、夕飯を食べた後、よく近所の公園に出かける。あまり、テレビを見る習慣がない、というか、実は家の中に居場所がないのかも知れないが、真っ暗な公園のベンチに座り、ひとときを過ごす。

 別に、何をするわけでもない。少ない街路灯のたよりない明かりをたよりに、本を読むわけでもない。老眼が進んだ目でそれは無理だ。

 ただ、ベンチに座って、ひとときを過ごすだけである。

 このよく行く公園に先客がいることがある。公園でまず最初に出会う施設がトイレなのだが、そのトイレから大轟音(轟音に大を付けるのはおかしい?)が響く。水を勢いよく流している音だ。しかも、半端な量じゃない。「誰か、いたずらで、水を流したままにしたのかな」そんな思いで近づくと。女性用のトイレからその音はする。女性用? ちょっと、ためらうものの、なかをそっと覗くと……。手を洗うボウルに衣類がうずたかく積まれ、なにやら、ゴシゴシと手を動かしている。うん? こりゃ、洗濯だ! 顔を覗くほど、勇気はなかったのだが、決して若い二十前後の女性とは思えない。

 で、トイレの前に再び目をやると、自転車が止められている。辺りを見まわすと、どこにも人影はない。いや~、このおばちゃん(もう、勝手におばちゃんと、決めつけてしまった)、自転車の荷台に山ほどに洗濯物を載せ、わざわざ、この公園に洗濯に来たんだ! 

 こんな経験をすると、のちのち、どうもこのおばちゃんと生活サイクルが一致してしまったように、公園利用は、おばちゃんが先か、ボクが先か、という自体。

 夜の公園もネタが尽きません。(I.K.)