まちに住む人々9―再びお茶の水駅

 「有名メーカー品が1000円、やぁーお姉さん1000円だよ! そこのお兄さん、このメーカー品が1000円」と海外有名ブランド品のマークが入ったバッグを高々と掲げ、「キョウビ、紙袋だって1000円する時代だよ。それが1000円だよ!」。JR御茶ノ水駅近く、お茶の水橋の袂(神田川の北詰)のちょいとしたスペースが商い場所だ。ビールケースの上にベニヤを乗せ、世界のバッグを陳列していた。ボクが買い求めていたのは、無名のバッグ。だったら、こんな橋詰めで買う必要はないのだが、お得意さん。

 紙袋も馬鹿げた値段が付いていたバブル時代だった。

 この露天商、時代がくだり、社会の変化を受け、コピー商品の追放などもあって、お茶の水橋の袂からいつしか消えていってしまった。

 ところが、今日、聖橋の袂で、バックを売っているお兄さんに出会った。お茶の水駅の東端、聖橋の袂だ。かつてのベニヤの上に商品を並べるのではなく、バッグが入った段ボールを並べ、紙に大きく1000円と表示。通行人に声も掛けず、アウトレット商品を並べるが如く、「1000円」と値段の安さを紙に書いて訴えていた。

 バッグの露天商が生き延びていた。力強く生き抜く豊かな生命力に感動! (I.K.)